さて、イッセー尾形さんのひとり芝居の興奮も冷めやらぬ中
電車に乗り、神戸へ。
慣れない乗り換えとかもしつつ兵庫県立芸術文化センターへ。
なんとか開演30分前に阪急中ホールに到着することができた。
お、見慣れた顔がそこここに…姫路からもたくさん来ていた模様。
そう、なんて言ったってこの「焼肉ドラゴン」は
姫路出身の劇作家であり演出家の鄭義信さんの作・演出の舞台なのだ。
この舞台の数日前、
姫路市芸術文化大賞を受賞された鄭さんにインタビューさせていただく機会があった。
「今度の焼肉ドラゴン楽しみにしています!」
その時点ではチケットを手にしていなかったくせにそんなことを口走った私に
「え、来てくれるんですか?有り難うございますー」
とフレンドリーな笑顔を見せてくれた。
ああ、あの笑顔を裏切ることにならなくて良かったとしみじみ思う。
感謝だ。

さてさて会場に入ると、噂には聞いていたが本当に舞台の上で焼肉を焼いている。
なんとも言えないいい匂いが漂ってきて、そしてハシゴの為に空腹を満たしていない私。
ああ、無理かも。

大阪万博のあった1970年前後、
とある焼肉店を舞台にある在日朝鮮人の家族をめぐるストーリー。
一家の、そして焼肉店の主である龍吉と英順夫妻
2人は再婚でそれぞれに娘がおり、2人の間に生まれた息子と分け隔てなく育てている。
しかしここにきて娘たちは親としては賛成しかねる相手とばかり恋仲になり
息子はいじめに逢って言葉が出なくなり、学校にもなかなか通えない。
そして30年近く前になけなしの金を出して買ったはずの土地は不法占拠だと言われ、
店は立ち退きを迫られる…

こう書くとえらい暗澹とした話みたい…だが、しかしこれがけっこう笑ってばっかりだったりする。
肝っ玉母さんだったり、かしましい娘達だったり、賑やかな常連客達がいい味を出している。
そして、龍吉がいうセリフがいちいち重みがある。
後からじわじわ効いて来る感じ。
「こんな日は明日が信じられる。たとえ昨日がどんな日でも」(台詞正確じゃないかも)

途中、思わず声を出して驚いてしまったシーンや
「なんでー?!」と?がいっぱい飛んだところがあったり
家族の歴史はぐるぐると動いていく。

そしてそして最後の桜吹雪…。
この頃には涙止まらず、切ないくらいにきれいな桜の花びらにさらに涙を誘われて
3枚目のハンカチに手を出すことになった。
この舞台でどこが一番お気に入りかと聞かれたら、ラストシーンと答える。
家族への想いや祖国へのそして日本への思いをすべてのせて舞い散る花びらの中
龍吉と英順が消えていく(この消え方も好きだ)。
泣き笑いで感情はぐっちゃぐちゃだけど「明日が信じられる」終わり方だ。
多分、このラストシーン見たさにまたこの作品の再々演を観に行くと思う。

字幕付きの舞台というのも初めての経験だった。
目が追いつかないかなと心配していたがまったく問題なく楽しめた。
そして、空腹も忘れて胸いっぱいの感激を抱えて帰ってきた。
ありがとうありがとう

機会があるならば時間とお金がなんとかなるならば
ハシゴしてでも舞台は観よう。
きっと美味しい気分になるから。